本編が始まる少し前、一樹の悶々とした恋心と下半身事情がテーマとなっています。爆発まで秒読み段階な一樹ですが、本懐が遂げられたのかどうか…は本編を楽しみにお待ちください♪
(しょっぱなからちょっとエッチな単語がたくさんでてきますので、読まれる際は背後に注意してくださいね)
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片思い方程式
(文:GINGER BERRY)
(文:GINGER BERRY)
俺はホモじゃない。別に男の体に欲情するわけじゃない。
……なのに、3年も前から俺のオカズは、幼なじみの山吹裕太と決まっていた。
「……裕太」
下着の中に手を突っ込み、すでに勃ちあがりかけた性器を握る。
『一樹……、きもちいい?』
目を閉じると、何度も繰り返し妄想し続けている声が聞こえてくる。
小さな頃からずっと一緒で、今も同じ高校のバスケ部に所属する裕太は、俺とは身長差が20cmもある小柄な体型で、可愛らしい顔をしている、と思う。詳しくは知らないが、クラスの女子が男性アイドルに似ているなどと言っているのを聞いたことがある。
でも、女みたいかというと違うだろう。細くても、硬くて薄い筋肉のついた体だし、めいっぱい口を開ける笑い方も女らしさとはかけ離れてる。
それでも、俺を欲情させるのは、裕太ひとりだ。
『俺のも触って? もう我慢できねー…』
妄想の中の裕太が恥じらいながら、俺の手を掴んで股間に導く。風呂やプールで、こっそり盗み見た裕太の裸を思い出しながら、自分のペニスをしごくスピードを速める。
俺のと違って淡いピンク色のペニスから滲み出た先走りが、薄い陰毛に白い雫となって垂れる。
『あぁっ…、そんな強くしたらだめっ…、いっちゃうからっ……』
少し高めの声を上ずらせて喘ぐ裕太は、きっとものすごく可愛い。
あっという間に、脳内の裕太は俺に全身を舐められ、しゃぶられ、尻の穴をぐちゃぐちゃにかき回され、俺のいきりたったペニスをねじ込まれ、ガツガツと犯される。
「……っ、裕太………っ」
吐息とともにびゅるびゅると噴き出した生暖かい粘液の感触で目を開ける。俺のベッドの上で痴態を晒していた裕太の姿なんて跡形もなくて、精液が汚すのは自分の右手だけだ。
「はぁ……」
また今夜もやってしまった……。
枕元のティッシュを数枚抜き取り、ざっと拭う。何度射精してもドロリと腹に溜まる不純な気持ちも一緒に、丸めてゴミ箱に捨てられたらいいのに……。
* * * * *
「じゃ、じゃあまたな!」
いつものように部活を終え、同じマンションに家がある俺たちは、同じ電車に揺られて帰宅した。
俺たちは普段から外階段を使って上り下りをしているから、帰りは下の階に住む裕太のほうが先に別れを告げる。
年がら年中バスケに夢中の俺たちは、別れる間際までNBAや、練習メニューの話で盛り上がって、ついつい立ち話をすることもある。なのに今日は、家の階が見えてきた途端、裕太は早足で駆け上がった。
様子がおかしい。俺は思わず手を伸ばした。
「おわっ!」
突然腕を掴まれた裕太の肩から、スクールバッグが滑り落ちる。咄嗟にもう片方の手でバッグの紐を掴むと、思いのほかズシリとした重みを感じた。
「……重いな」
基本的にバスケ馬鹿な俺たちは試験期間と宿題が出たとき以外、教科書は置き勉だ。
だけど今日の裕太のバッグは分厚い冊子が何冊も入っていそうな感触と重みがした。
「そ、そうかな……」
裕太がすすっと目線を逸らす。今日の帰り道、裕太はやたらとしっかりバッグを脇にはさみ持っていた。いつもは、小さいくせに大きく手を振って歩くから、しょっちゅう荷物をそこらにぶつけまくっているのに。バッグのことが気になるのか、俺が話しかけても、上の空だった。
「こん中に、なんか入ってんのか?」
ひとには言えない失敗や、愚痴なんかもなんでも打ち明けあってきた幼なじみとしては、裕太が俺になにかを秘密にしているというだけでイラッとした。夜な夜な裕太に言えないような妄想を繰り広げている自分を棚にあげて。
「……あー、わかった。言うよ。だからそんな顔すんな」
裕太が口を尖らせて、俺の眉間に深く刻み込まれた皺をつつく。
「じゃあ、中、見ていいのか?」
苦笑しながら頷く裕太がバッグから手を離す。俺は躊躇いもなくファスナーを開けて、中が見えるほどガバリと開く。
「……っ!?」
目に飛び込んできたのは、見慣れない物体だった。中央に赤い突起がついた2つの丸い白い膨らみ。
これは……。
「今日先輩に無理やり押し付けられたエロ本だよ」
セーラー服をたくし上げて乳を晒し、身をくねらせた女の写真が印刷された雑誌が数冊、バッグの中にギチギチと押し込まれていた。
「……………」
「お前、こーゆーシモネタって苦手だろ? だから一樹には渡さないでくださいって言ったら、じゃあふたり分持ってけってさ」
バツが悪そうに裕太が頭をかく。女の裸を見たせいか、頬から耳までを真っ赤に染めている。
火照った耳たぶを口に含みたい欲求が駆け上がったが、裕太の言葉に対する疑問で衝動を押し込める。
「シモネタが苦手? 俺がか?」
ホモではないけれど、女の体にも興味がない俺は、確かにエロ本の世話になったことはない。けれど毎晩裕太を犯しまくる妄想を滾らせているので、シモネタが嫌いなわけではない。
むしろこのエロ本の表紙から、一瞬にしてセーラー服を身に纏った裕太が自ら胸元をたくし上げ、小さな小さな乳首をふるふると勃起させて、いじって欲しいとねだる姿が脳内を駆け抜けたくらい、エロいことへの興味は多大にある。
「苦手だろ? 先輩たちが持ってくるエロ本に、お前見向きもしねーし、エロい話になるとすげー眉間に皺よせんじゃん」
「裕太だって好きじゃないだろ」
俺は他の奴らとあまりにもズリネタが共有できないから距離を置いてるだけだが、裕太は俺とバスケばっかしてた所為か、そういうものに免疫がなくて、本当に苦手だった。
先輩たちも、エロ本を見せられて真っ赤になってあわあわする裕太が面白くて、わざとこんなものを押し付けたんだろう。
「……でも先輩が一推しだって勧めてくれるモンを断れないし。そーゆーのって白けるだろ?」
もし俺がその場にいれば、場の空気なんて気にせず押し返してやったのに。多分そうなることがわかっていて、入部以来ニコイチで一緒にいる俺がいない隙を狙って、先輩は裕太に話を振ったんだろう。
裕太は明るく、気遣いができる性格で、先輩たちに可愛がられている。元来対話力が壊滅的で、他人に対して圧倒的に興味がなく、バスケさえできればかまわない俺とは違って、裕太はあっという間に部のマスコット的存在になった。
「先輩たち、たまに悪ノリすっから気をつけろ」
裕太にとって、先輩に好かれることは喜ばしいことなのに、胸がムカムカした。本当は近寄らせるなと言いたい気持ちを飲み込んで、心配するふりをした言葉をかける。
「うん。心配してくれて、ありがとな」
なにも知らない裕太が、目を細めて二カッと笑う。仲間たちとバカ話してるときとは違う、嬉しいけど恥ずかしいときにする、昔からの不細工な笑い方だ。
俺はホモじゃない。なのに、幼なじみの裕太をオカズにしている。
思い切り抱きしめて、誰にも触れたことのないところまで全部、俺のものになればいいのに。ずっと傍にいて、俺にだけ笑いかければいいのにって思う。
もうずっと俺は、こんなにも、どうしようもなく。
――裕太のことが、好きなんだ。
(END)
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